太極拳は健康効果以外も期待できる?

香港に行った時、至るところで見かけたのが太極拳を
集団で行っている人達です。

一般的なイメージでは朝に行っている感じがしますが、
昼間でも夕方でも、九龍公園では何人も集まっていました。

模造刀のようなものを持っている人も見かけます。

この太極拳、元々は拳法であることはご存知のとおりです。

ですが、起源と現在公園で見かけるものとはかけ離れています。

どういうことかと言うと、
本来の太極拳は拳法のため、
厳しい鍛錬が必要なものでした。

他の格闘技を想像しても、そのことは容易に想像がつくでしょう。

空手、ムエタイ、ボクシング、少林寺拳法、柔道・・・。

楽して強くなれるものなどありません。

しかし、香港や中国の公園で見かける太極拳は、
ゆっくり動くだけで激しい運動はしません。

もちろん、それはそれで大変だったりするのですが、
一般的な格闘技の苛酷さに比べればやさしいものです。

これは現在流通している運動法としての太極拳が、
本来の拳法とはまったく違った姿になっているためです。

中国政府によって簡略化され、
一般的な健康法としての形に加工されて広まったのですが、
当然ながら大衆受けするように作りなおされています。

過酷な鍛錬ではなく、取っ付きやすく続けやすい形に。

そのため、太極拳をやっているから強くなるかと言うと、
基本的にそんなことはありません。

ただし、体に過剰な負担をかけない健康法のため、
体を強くする(健康を保つ)という意味では効果的ですし、
不健康な状態よりは肉体的に優位にはなります。

しかし、いわゆる格闘技を本気でやっている人のような
卓越した力が身につくものではありません。

本来の拳法としての太極拳と、
公園で行われているものの関係は、
ボクシングとボクササイズの関係に似ています。

ボクササイズは女性でもダイエット目的やストレス解消のために
気軽に始められるようになっています。

しかし、本気でボクサーとして練習をしている人に比べれば、
当然戦闘力としての強さは大きく劣ります。

では太極拳は意味がないのかというと、
そういうことでもありません。

激しい有酸素のように体が酸化することもなく、
気の流れを調整することもできます。

そういった意味では、
子供からお年寄りまで気軽に行える健康法としては、
それなりに優れた方法であるという一面があります。

また、日本人の感覚としては、
なぜ中国人や香港人はあんなに群れるのか理解に苦しみますが、
(世界中で中国人の団体客の異常性は目立っています)
気の循環という意味では悪いことではありません。

日本でも高齢者の孤立が問題視されますが、
孤独死ばかりが問題なわけではなく、
そもそも話し相手がいないと健康に問題が起こるのは
科学的にも証明されています。

孤独の害は喫煙に匹敵するとも指摘されるほどです。

これを東洋医療で言う気の循環という観点で説明すると、
気は個人の体内でのみ巡るものではありません。

人と人の間、あるいは場に宿ることもあります。

同じ目的を持って人が集まり、
一定の行動をするのは気を循環させる手軽な方法です。

その意味で、決まった時間に集まって太極拳をするのは、
効果があるのです。

時間が決まっている方が生活のサイクルが安定し、
それが健康に寄与するという効果も期待できます。

こう考えてみると、
(体操的な意味での)太極拳は
格闘技としての力を身につけるには不十分であるものの、
健康効果としては決して馬鹿にできないところがあります。