仲良くなった患者さんが退院する話:看護師が語る実話

以下は現役看護師の方から聞いた話です。

「どんな患者さんも退院していただいたらすごく嬉しいですけれども、入院から手術前後を受けもってリハビリをして、ようやく退院をして社会に戻っていく患者さんの姿を見るときはもっと嬉しいです。

やりがいを感じることがあります。

逆にやりきれない時もありました。

ひとり、眼科の患者さんだったんですれども、高齢で眼がぼやけて視力がすごく低下しているということで、原因は白内障と言って、目の前にベールがかかった、霧がかかったような視野になってしまうという患者さんだったんですけれども、もう80代の後半だったでしょうか、もうすべてお嫁さんに頼りっきりで、自分でもちろん歩けないしオムツをして、ベッド上で常に過ごしている。

顔を洗うのもお嫁さんにやってもらって、食事もスプーンで口まで運んでもらうというほぼ全介助という患者さんがいました。

白内障の手術を無事に終えて、手術の後は翌朝から靄が取れたようにきれいに見えるんですけれども、視覚を取り戻して見えるようになってからの患者さんは急変しまして、自分のことは自分でやりたいと言い出しました。

お嫁さんにすべて頼りきりだったのですが、食事ももちろん自分でスプーンで口まで持っていく、トイレにも行きたいと言って車いすを使ってトイレに行くようにもなったということで、生活が良い方に一変しました。

この時は本当にうれしくて、なので退院を間近に控えて、こんなに自立した生活ができるんだったら、家のほうも寝たきり生活の場所から車いすを使ったバリアフリーの家に変えていかなくてはならないということで、患者さんと家族を含めて自宅をどういう風に変えていけばいいかと話し合って、前に生き生きと進んでいく患者さんの姿が嬉しくてうれしくて、この時だけはやりがいを感じました。

もう一つは、これはつらい経験だったんですけれども、手術の後に肺炎という、肺の病気にかかってしまった患者さんの話です。

手術はとてもうまくいったんですけれども、この方も高齢だったこともあって、肺炎にかかってしまいました。

誤嚥性肺炎だったと思うんですけれども、誤嚥性肺炎というのは嚥下機能、飲み込む力の方が低下していて誤って水などが肺の方に入ってしまって炎症を起こしてしまう。

肺炎で年間亡くなってしまっているご老人の方はとても多いんですけれども、絶食になるんですね。

これ以上水分が間違って入ってしまって肺のほうに入ってしまって、肺炎が悪化しないように。

あと固形物が肺のほうに入ってしまって肺炎が悪化しないように、ということでずっと点滴に繋がれた生活になります。

人って口からものを入れないとどんどん元気がなくなるものなんですかね。

その患者さんもどんどん元気がなくなってしまいまして、もうあと何日もつか分からないということで亡くなる前にお家に家族が戻したいということで、お家に帰られたんですけれども、後日亡くなりましたという報告を受けました。

すごく可愛らしい患者さんだったので、みんなでがっかりしたんですけれども、救いは最後に飲みたいお水を一口飲んで眠るように亡くなったということを聞いたときに、やりきれない思いと、それで良かったのかなと、お家で亡くなることができて良かったのかなという思いがありましたね。」