今回の話は、朝礼の際に立ちくらみの症状が何度か出て、
結局退職することになってしまったKさんの話。
なお、プライバシー保護のため、
名前はアルファベットを使っていくことにします。
このKさんは朝礼で何度か倒れたことがあり、
最初のうちは周囲も気を使ってくれていたのが、
回数を繰り返すごとに徐々に雰囲気が変わっていったそうです。
というのも、原因はある取締役の態度で、
「仕事ができるように体を作ってくるのも社会人の務めのうち。
朝から倒れるなんてたるんでる。
そんな状態なら、会社を辞めて入院でも何でもすればいい」
と聞こえよがしに言ったことです。
周囲も相手が役員では何も言えず、
そこから空気が変わっていったということでした。
Kさんの場合、目立って欠勤が多いわけではなく、
有給も大部分が未消化の状態でした。
社内でも休みを取ることは少ない部類に入り、
朝礼で倒れた時も残業でその分を補い、
タイムカードも早めに押して休んでいた時間を
補えるようにしていました。
狭い部署なので、上司もその行為は見ていた上、
タイムカードを押した後も仕事をしている理由を聞かれて
はっきりと答えたこともありました。
しかし、社内の雰囲気は取締役の一言で変わってしまったのです。
元々午前中が忙しい職場だったこともあり、
同僚としてもKさんが仕事をしていない間は
負担が大きくなる部分があったそうですが、
それにしても酷な話だと思います。
立ちくらみやめまいは本人が
100%コントロールできるものではありません。
丸一日欠勤するのに比べれば、
周囲の負担もそこまで大きくはないでしょう。
しかし、実際にはKさんは退職することになりました。
その決意を固めたのは、
朝礼の時に立ちくらみで倒れそうになったので早めに椅子に座ったら、
その日の昼休みの前に課長から嫌味を言われたことでした。
「部長まで全員立ってる中で、
ゆうゆう座ってられる度胸があれば、クレームぐらい楽勝でしょ」と。
この会社で神経を削るぐらいであれば、
転職して理解のある職場を探すほうがマシだと思い、
数日後に退職願を出したということでした。
Kさんの会社は育児休暇を取った人もおらず、
産休はかろうじて何人かの女性社員が経験しているぐらいで、
大部分は出産を控えた段階で辞めていくか、
結婚の時に寿退社していくそうです。
そうした旧態依然とした閉鎖的な社内のやり方が
女性として尊重されていないと感じるところもあり、
男性社会丸出しの組織に身を置くのに限界を感じたという話でした。
幸い、Kさんは5年以上同じ会社に勤めていましたし、
それなりに専門性の高い仕事をしていたこともあって
県内の別の会社に無事転職することができました。
そちらでは、面接の際に朝礼の時に立ちくらみが出ることがあること、
症状は1時間もすれば収まるので仕事に大きな支障はないこと、
職場で休んでいた分は残業または体調の良い日に
埋め合わせで働くということを申告しました。
その上で面接で落とされたのであればあきらめがつくし、
大事なことをクリアにしないで
同じことを繰り返すことが何より大きなリスクだと
以前の会社で痛感したためです。
健康と仕事の間には密接な関係があります。
腰を悪くしやすい肉体労働とか、
アスベストで肺病を患いやすい環境といった
明確な因果関係があるものはもちろんのこと、
Kさんのように持病と付き合っていきやすい職場も、
そうでない職場もあります。
言葉にするほど簡単なことではないとはいえ、
せめて社員の健康ぐらいは気遣ってくれる会社で働きたいものです。