東洋医学における正気と邪気

普段病院では聞く言葉のない言葉として、
正気と邪気という概念が東洋医学にはあります。

正規はいわゆる自然治癒力や抵抗力、生命力で、
病気を防ぐ力です。

逆に邪気は体に悪影響をもたらす原因で、
たとえばウイルスや細菌、過度な温度変化等です。

正気が弱っている状態であれば、
ちょっとした邪気にも負けることになります。

たとえば、学級閉鎖になるほど風邪が流行っても、
平気な人は何事もないかのようにピンピンしています。

その一方、高熱を出して寝込んでいる人もいるわけです。

常に一緒にいたわけではないので邪気の量も違うでしょうし、
正気についても同様です。

正気が充実している人は寒さやウイルスを弾き返せても、
不足気味な人はちょっとした邪気に当てられてしまいます。

そのため、正気の充実と邪気の除去という
2つの視点が必要になります。

風邪予防のために栄養のつくものを食べたり、
十分な睡眠をとるのは正気の充実が目的です。

対して、体が冷えないような服装にするとか、
ホッカイロを使うとか、マスクをするといったのは
邪気を寄せないということになります。

どちらが優位というわけではなく、
両方とも重要なアプローチです。

扶正ときょ邪

正気にプラスの方向に働くアプローチを
扶正と呼びます。

その反対に邪気を取り除くのがきょ邪です。

本来きょ邪の「きょ」は示す偏に去るという字を書きます。

扶正ときょ邪について、
例を出して考えてみましょう。

たとえば、ある人が大腸がんを患っているとします。

この場合、多くの人が思い浮かぶ治療は
手術や抗がん剤治療でしょうか。

他に放射線療法や腹腔鏡治療を連想する人もいるでしょう。

これらはがん細胞という邪気を攻撃するもので、
きょ邪の行為ということになります。

ただし、がん治療というのは正常細胞にもダメージを与えます。

その最たる例が抗がん剤治療です。

脱毛やかゆみ、吐き気、虚脱感等の副作用は、
きょ邪の際に出るひずみのようなものです。

これに対し、同じ大腸がんの人に対して、
東洋医学的なアプローチとして、
気功法を実践してもらったり、
鍼や漢方を治療に取り入れることがあります。

それによって体の回復力を高めるわけですが、
こちらは正気を助ける行為を行っているわけなので、
扶正の例ということになります。

このように、東洋医学は補完医療や代替医療として
命の現場に取り入れられていることもあります。

正気と邪気、そして扶正ときょ邪。

耳慣れない言葉ですが、このように考えていただくと
簡単に理解できるものであることが分かるかと思います。